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「火星年代記」(新版)

レイ・ブラッドベリ Ray Bradbury の詩情豊かな連作短編集「火星年代記」 を初めて読んだのは高校生の時だった。それ以来、翻訳と原書 The Martian Chronicles は何回か読んでいて、私にとって特別な作品である。書店でSFの文庫本の棚を眺めていたら、その「火星年代記」の翻訳が新しい装丁で出ているのに気づいた。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: レイ ブラッドベリ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/07/10
  • メディア: 新書
出版元の早川書房は、時おり往年の名作SFを装丁を変えて再版するので、今回もその一環かと思った。ところが手に取ってみたら、今回は「新版」と銘打たれており、かつて読んだ版とは異なる点があることに気づいた。
この作品は、1940年代の後半に雑誌に発表された火星をテーマにした短編をまとめたもので、1999年から始まる「未来」の話だった。しかし新版では時代が30年ほど後ろにずらされ、2030年から始まる形になっている。また全体を構成する短編も、1編を削除し、代わりに別の短編集に収められている2編に差し替えた形になっている。 これはちょっとした驚きだった。巻末の解説によると、少し前にこうした新版が原書で発行され、翻訳も今回、これにあわせたのだという。 訳自体は、新しく設定された年号の変更と2編の追加を別にすれば、旧訳と同じようだ。それでも、旧訳は実家にあって手元にないことや好奇心もあって、新版を購入した。読んでみて、幾分ノスタルジーがあるかもしれないが、やはり名作だと思った。 それでも、果たして新版を出すほどの必要があったのか、ちょっとブラッドベリの意図をはかりかねるところもあった。 解説によると、削除された1編は人種差別の問題を扱った作品だという。恥ずかしながら記憶に残っておらず、いま読んだら不快な内容なのかもしれない。しかし、それはそれである意味、執筆当時の時代の空気を伝えるものともいえるのではないだろうか。今の時代にはそぐわないのかもしれないが、削除までする必要があったのだろうか。 また代わって2編が今回仲間入りしたが、このほかにもブラッドベリは火星をテーマにした短編を発表していたという。そうした短編を最初に「火星年代記」としてまとめた際、作者にはどんな基準や考えがあったのか、またその時にふるい落とした中から今回2編を選んだのはどうしてか。内容や他の短編とのつながりの上で、あらためて追加するほどの作品とは思えなかっただけに、そちらの興味を持ってしまった。 そして何より、時代を約30年先に進めたことに違和感があった。最初にこの作品を読んだとき、冒頭の短編「1999年1月 ロケットの夏」というタイトルが大いに印象的だった。しかし、新しい「2030年」という年号は何とも中途半端に思える。 だったらいっそ、「2099年」にしてしまってもよかったのではないか。いや、いくらテクノロジーの斬新さで読ませる作品ではないとはいえ、これだとさすがに未来すぎるか。 作者としては、書いたときは「未来」のはずだった物語が、実際の年号に追い越されて「過去」になってしまうのは耐えられないことなのだろうか。新しい読者を開拓するためには、すでに過去になった年号では具合が悪いということなのだろう。 そういえば、似たような特徴を持つ作品「夏への扉」について以前書いたことがある。こちらはすでに作者が亡くなっているので作中の年号はもう変えようがないが、それでもこの作品は新訳が出るほど読み継がれている。 「火星年代記」もそうした「古典」といえる作品だと思っているオールドファンの私には、今回の新版はやや腑に落ちないものだった。それでも、未読の方にはぜひおすすめしたいと思う作品であることに変わりはない。翻訳もすぐれていると思う。 なお私が高校生の時に最初に読んだのは文庫本だったが、この翻訳が最初に出たのは新書版の「ハヤカワSFシリーズ」の1冊としてだった。社会人になって、すでに絶版になっていたその「火星年代記」を古本屋で見つけた。星新一の作品の挿絵で親しんでいた故・真鍋博氏による装丁とイラストが何とも味があり、文庫本と同じ訳と知りながらその場で購入した。今は実家に置いてあるので、次に行った時に探してみようか。 [過去の参考記事] 「夏への扉」の新訳
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tempus fugit

Author:tempus fugit
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「光陰矢の如し」を意味するラテン語由来の言葉が tempus fugit です。
学習・趣味・仕事で英語に触れていつの間にか三十数年。英検1級とTOEIC900点超を取得した今も上級者への道は遠いですが、これまで出会った印象深い単語や表現について書いていきます。

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