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語学に打ち込んだ江戸の先人

先月の末、戦争文学や歴史小説で知られる作家の吉村昭が亡くなった。

ある程度の年齢になって、自分の好みが変わったなと自覚したものがいくつかある。それが進歩なのか退歩なのはわからないが、読書についてひとつあげると、史実に基づく歴史小説がある。

以前は、司馬遼太郎の作品を面白く読んでいた。「司馬史観」という言葉もあるが、時に物語から脱線して、司馬氏が示す分析を楽しんでいた。ところが、司馬氏の考えとは異なる説を知るようになると、こうした分析を「本当にそういえるのだろうか」と思ったり、そのうちに「ちょっと邪魔だな」とも考えたりするようになった。

逆に惹かれるようになったのが、それまでは淡白すぎると思っていた、吉村昭の作品だ。

最初に読んだ作品は、「海の史劇」だった。司馬遼太郎の大人気作「坂の上の雲」と、日本海海戦を描いている点で重なるが、はじめは、司馬の方が圧倒的に面白いと思った。しかし何年かたって、改めて「海の史劇」を読んだ時には、それが逆になっていた。

吉村氏は、自分の考えを前面に打ち出すことはほとんどない。描かれるのも、大物の単純な成功物語ではなく、たとえ名の知られた人物であっても、悩み苦しみ、挫折や失敗もする人物の姿だ。

丹念に取材した史実をベースに、淡々と話を進めながらも、読み終わった後に手ごたえを感じさせる。それに惹かれるようになった。たとえていえば、素材そのものを生かした料理に似ているといえばいいだろうか。すべての作品を読んだわけではないが、もう新作が生み出されないのかと思うと、残念でならない。

吉村氏は、戦争についての作品も多く書いており、今のこの時期にふさわしいかもしれないが、ここでは、外国語との格闘が描かれている、「冬の鷹」を紹介しよう。

「解体新書」といえば、杉田玄白ばかりが有名だが、実際に翻訳の中核を担ったのは、発行時に名は連ねなかった前野良沢だったという。この作品は、玄白の陰に隠れている感のある、不器用ともいえる良沢の生き方を描いたものだ。

良沢は蘭学とオランダ書の翻訳に打ち込むあまり、藩主から「蘭学のお化け」という褒め言葉を貰い、後日、「前野蘭化」と号するまでになったという。世事にたけた玄白とは対照的な良沢を、多少ひいきしすぎでは、という感じもするが、教科書等で名前を聞いただけという人が多いのではと思われる人物について、認識を改めさせてくれる作品である。

吉村昭氏と同じ日に、凛とした和服姿が印象的だった、社会学者の鶴見和子氏も亡くなった。お二人のご冥福をお祈りします。


海の史劇 (新潮文庫)海の史劇 (新潮文庫)
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tempus fugit

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「光陰矢の如し」を意味するラテン語由来の言葉が tempus fugit です。
学習・趣味・仕事で英語に触れていつの間にか三十数年。英検1級とTOEIC900点超を取得した今も上級者への道は遠いですが、これまで出会った印象深い単語や表現について書いていきます。

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