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疑問符・感嘆符と翻訳

前回、アメリカの軍事基地 Area 51 の説明を日本語版ウィキペディアから引用したが、その中に疑問符がついた文が続けて出てきた。「?」で終わる文が並ぶのを見ていると、ちょっとくどいなあ、と感じてしまった。
繰り返しになるが、その部分をもう一度抜き書きしよう。
アメリカ軍機密の航空機、特にステルス機の試験飛行を行っていると考えられている。「墜落したUFOが運び込まれているのではないか?」とか、「ロズウェル事件と関係しているのではないか?」さらに、「グレイと呼ばれる宇宙人が居るのではないか?」と、その種のマニア達から疑われている。
私が疑問符(そして同じような意味で感嘆符)が頻出する場合に「うるささ」を感じるようになったのは、クラシック音楽の歌詞対訳がきっかけだった。声楽曲やオペラでは、内容的に盛り上がると、原詞に「?」や「!」のついた文が立て続けに出てくることがある。それを残らず忠実に表記した翻訳をたまに見かけるが、目がちかちかし、そこまで律儀に原文に従うこともないのでは、と思ったものだ。 「?」や「!」をつけること自体は誤りではないのだから、くどいと思うのはあくまで私個人の感覚的なものであり、効果的な場合もあるだろう。その一方で、日本語はもともと疑問符や感嘆符を持たず、こうした符号を使わなくても疑問や感嘆の意を表すことができるのもまた確かだ。 そして、英語ではそうはいかないことを、俳句の翻訳を読んでいると実感する。例えば、以前も取り上げた「奥の細道」の英訳をのぞいてみよう。芭蕉のこの名作には複数の翻訳があって、同じ句でも訳者によって疑問符や感嘆符があったりなかったりするのは当然であり、あくまで私が意図的に選んだ例であることをお断りしておく。 「あらたうと青葉若葉の日の光」 O holy, hallowed shrine! How green all the fresh young leaves In the bright sun shine! (Dorothy Britton 訳) Ah, awesome sight! on summer leaves and spring leaves the radiance of the sun! (Helen Craig McCullough 訳) 「五月雨の降りのこしてや光堂」 Have the rains of spring Spared you from their onslaught, Shining Hall of Gold? (Donald Keene 訳) Do the Fifth-Month rains stay away when they fall, sparing that Hall of Gold? (McCullough) 「塚も動け我が泣く声は秋の風」 The autumn wind's sigh Is my heart's sorrowing cry. Oh, shake the mound! Reply! (Britton) Stir, burial mound! The voice I raise in lament is the autumn wind. (McCullough) Shake, little grave mound! The voice with which I cry is at one With the autumn wind. (Earl Miner 訳) こうした英訳を初めて目にした時は、疑問符や感嘆符がついていることに何となく違和感があった。日本人の私としては、平たく言って、何だか安っぽい感じを受けたのである。日本語がわかる英語のネイティブにとっては、こうした符号があった方が原文のニュアンスに近く、英語としてより自然なのだろう、ということは想像がつくし、頭ではそれが理解できていても、である。 そして面白いことに、日本人の訳した「奥の細道」を見ていると、非日本人の英訳に比べて疑問符や感嘆符の数がずっと少ないように思える。符号を数えたわけではないので、あくまで私の印象ではあるが。日本語ネイティブとしては、「?」や「!」を俳句の訳に多用するのはためらいたくなる心理が働くのだろうか、とも考えたくなった。 「奥の細道」の英訳から、先に掲げた作品を日本人の訳者がどう表現したか見てみよう。 「あらたうと・・・」 It is with awe That I beheld Fresh leaves, green leaves, Bright in the sun. (Nobuyuki Yuasa 訳) Look, so holy: green leaves young leaves in the light of the sun (Hiroaki Sato 訳) 「五月雨の」 Even the long rain of May Has left it untouched - This Gold Chapel Aglow in the sombre shade. (Yuasa) The May rains, falling, seem to spare the Light Hall (Sato) 「塚も動け」 Move, if you can hear, Silent mound of my friend, My wails and the answering Roar of autumn wind. (Yuasa) Gravestone, move: sound of my wailing the autumn field (Sato) こうした訳者が他の句の英訳でも疑問符や感嘆符を全く使っていない、というわけではないので、これもあくまで私の印象論である。訳者の考えは直接尋ねてみなくてはわからないことはもちろんだが、ちょっと面白いと思ったので触れてみた。 私についていえば、疑問符や感嘆符がついていると安っぽく感じたというのは、あくまで日本人の感覚で英訳を読んでいることの証しなのだろう。そして、原作と英訳の間に感じるこうした溝は、日本で生まれ育った私の英語力がこの先どんなに上がったところで埋まるものでもなかろう。 以上、疑問符や感嘆符と翻訳について、とりとめもないことを書いてみた。そして、こういったことを考える私は、もう古い世代に属するのだろうとも思う。最初に触れた「エリア51」についての日本語版ウィキペディアの文章は、英語からの翻訳ではないようだし、顔文字(smiley, emoticon)を使うのが普通の世代にとっては、日本語固有のものではない疑問符や感嘆符も、いまやごく自然の感覚で使いこなしているのだろう。 参考:英訳「奥の細道」 英訳「奥の細道」を読む〜月日は百代の過客
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tempus fugit

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「光陰矢の如し」を意味するラテン語由来の言葉が tempus fugit です。
学習・趣味・仕事で英語に触れていつの間にか三十数年。英検1級とTOEIC900点超を取得した今も上級者への道は遠いですが、これまで出会った印象深い単語や表現について書いていきます。

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