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【本】 山崎貞「新々英文解釈研究」

新々英文解釈研究 <復刻版>

新々英文解釈研究 <復刻版>

  • 作者: 山崎 貞
  • 出版社/メーカー: 研究社
  • 発売日: 2008/12/11
  • メディア: 単行本
懐かしい本が復刻されているのを書店で見つけた。味もそっけもない表紙と一色刷りの装本。私が高校生の時にかじった参考書である。かじった、というのは、1冊をやりとげたとは到底言えないからだが、英語の構文や表現について持っていた知識を整理するのに大変役に立った。
高校2年生の冬、易しめの参考書を仕上げたあと、何かもう一冊を、と思って選んだのがこれだった。100あまりの項目を短い例文で解説し、さらにかなりの数の課題文をつけている。項目に分けているのは一見英文法の本のようだが、重要な構文や表現をよく選んでいると感じた。他に何冊か見比べたが、長い課題文を示して解説と訳をつける形式の本は体系的ではなさそうだし、英文を因数分解のように解体して説明している参考書は肌に合いそうになかった。 手に入れてから、まず全項目の例文と説明を通読し、それから最初に戻って課題文に取り組んだ。しかし程なくして質・量とも充実した内容に音を上げ、問題をあちこち拾い読みし、しばし意味を考えてから自分で訳すことなく訳例を見る、というお手軽な方法に切り替えてしまった。 あれから三十年、この本に再会して、そういえばこんな例文があったな、と懐かしく思い出しながらページを繰った。 例えば、of の用法について説明する項目に Such meanness does not become a man of his means. という例文がある。become は「〜になる」ではなく「〜に似合う」であることや mean という単語にいくつかの意味があることも示されていて面白い。 またあるページでは They worked hard like so many ants. という例文をあげて so many は同数を表すことを説明している。先日取り上げた本「さよなら英文法!」が提唱するような、辞書も参考書も捨ててひたすら多読だけ、という方法だと、many を「多い」ととらえたままで読み流してしまう人もいるのではないだろうか。 さらに、I will give you what money I have. という例文があり、what は that which という意味のほかに、all the 〜 that... と見るべき場合も多く、what は little を伴わなくても little の意味を含んでいることが多い、と説明されている。 むろん、こうした事項を取り上げているのは別にこの本だけではなく、他の参考書にも書かれている。また訳例の面でも、例えば上記の文は「(たくさんはないが)ありったけの金を全部あげよう」としているが、別の参考書ではこの表現の例文に「なけなしの〜」という訳をつけていて、「新々〜」よりもこなれていると感じる。 それでも、非常によくできた本だと思う。短文による項目ごとの説明はとっつきやすいが、その一方で、あとに続く課題文は語彙レベルも内容も「大人」を感じさせるものばかりで、難しいものに挑戦したい、背伸びをしたいという高校生の心を十分刺激するものだった。 この本は当時から、内容が難しすぎる、あるいはあまり使われなくなった構文や表現が載っていると言われていたように思うが、著者や改訂者はレベルについては妥協をするつもりはなかったのではと想像する。利用者が将来、専門的な英語の文献を読む必要に迫られた時のために、最低限この程度は習得していてほしい、そんな信念があったのではないか。そして、難しい英文に手が届くようにと願っていた十代後半の私は、そうした突き放したような厳しさ、妥協のなさを無意識のうちに感じ取り、それに惹かれたのかもしれない。 復刻はされたものの、他にさまざまな参考書が出ている今、あえてこの本で学ぼうという生徒がどれくらいいるだろうかと思う。購入した人の中には、私のようなかつての利用者がかなりいるのではないか。そこには多分に、自分が若かった頃へのノスタルジーもあるはずだ。そしてそれは私の場合、中年となった自分が、もはやあの頃のような「背伸び」をしなくなってしまったことを否応なく自覚させる、ちょっと苦い懐かしさである。
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tempus fugit

Author:tempus fugit
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「光陰矢の如し」を意味するラテン語由来の言葉が tempus fugit です。
学習・趣味・仕事で英語に触れていつの間にか三十数年。英検1級とTOEIC900点超を取得した今も上級者への道は遠いですが、これまで出会った印象深い単語や表現について書いていきます。

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