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「海」ではない sea、およびその由来について

少し前に、「大きな数」を表すいくつかの単語について書いた。一方でこのところ、季節にあわせて「海」から連想したことについても綴ってきたが、考えてみると、sea という単語も、大きな数や量を表す際に使われるのだった。
sea が広大なものや多量なものについて使われうることは想像に難くない。a sea of something という形で使うことができる。
- a large amount or number
- a vast expanse or a great number

(用例)
- a sea of troubles
- The teacher looked down and saw a sea of smiling faces.
さらに、sea change という表現を学んだことがある人もいるだろう。「大きな変化」「著しい変貌」という意味である。あらためて英英辞典を引いてみると、
- a complete change
- a substantial transformation
- any striking transformation or alteration, often an improvement
- a striking change, as in appearance, often for the better

(用例)
- a sea change in public policy
- a sea change in attitudes about legalized gambling
- There will have to be a sea change in people's attitudes if public transport is ever to replace the private car.
とある。"often an improvement" "often for the better" という意味あいがあることは、私の持っている英和辞典には書かれておらず、調べた甲斐があった。 この表現に出会った時は丸覚えしただけで、なぜ sea と change がセットになっているのか、ということに興味は持たなかった。今はむしろ、そちらの方を知りたいと思う。 その由来は、英和辞典にも書かれていた。シェイクスピアの「あらし」 The Tempest に出てくるセリフということだ。手元に翻訳(松岡和子)はあるが、原典は持っていないので、ネットで調べた。妖精 Ariel が、Ferdinand 王子の父について語るセリフだ。
Full fathom five thy father lies:
Of his bones are coral made:
Those are pearls that were his eyes:
Nothing of him that doth fade
But doth suffer a sea-change
Into something rich and strange.
(第1幕第2場)
英語のネイティブスピーカーが書いたものにも、次のような記述があった。
By "sea change" (which seems to have lately lost its hyphen in common usage) Shakespeare meant a radical, fundamental transformation, metaphorically similar to the change wrought by prolonged submersion under water.
(http://www.word-detective.com/090699.html#seachange)
とはいえ、このセリフを「大きな変化」のようには取らず、文字通り「海の作用による変化」と捉える解釈もあった。例えば The American Heritage Dictionary はこの表現をこう定義している。
1. A change caused by the sea: “Of his bones are coral made:/Those are pearls that were his eyes:/Nothing of him that doth fade,/But doth suffer a sea change” (Shakespeare).
2. A marked transformation: “The script suffered considerable sea changes, particularly in structure” (Harold Pinter).
(http://www.bartleby.com/61/45/S0184500.html)
セリフの翻訳を見ても、
水底深く父は眠る。
その骨は今は珊瑚
両の目は今は真珠。
その身はどこも消え果てず
海の力に変えられて
今は貴い宝もの。
(松岡和子訳)

父は五尋海の底、
その骨はいま白珊瑚、
かつての二つの目は真珠、
その身はどこも朽ちはてず、
海はすべてを変えるもの、
今では貴重な宝物。
(小田島雄志訳)
こんな説明もあった。
Shakespeare obviously meant that the transformation of the body of Ferdinand’s father was made by the sea, but we have come to refer to a "sea change" as being a profound transformation caused by any agency. (中略)
The point at which it stopped being a direct quotation and turned into an idiom is hard to pin down, though it seems to have happened only in the latter part of the nineteenth century. (後略)
(http://www.worldwidewords.org/qa/qa-sea1.htm)
探索はここで終わりにするが、シェイクスピアの sea-change をどう解釈すべきかや、この表現の意味がどう変遷したかについては、さらに調べれば面白いことがわかるかもしれない。 それはともかく、英和辞典やフレーズ集などを読んで、"sea change" イコール「大変化」イコール「シェイクスピアが創った表現」、と覚えるのは簡単なことだ。それで終わりにしても特にまずいことはないだろう。しかし、もう少し幅を広げて由来や背景を調べてみると、英和辞典の簡潔な訳と説明だけはわからない、言葉の持つ面白さが見えてくるように思った。
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「光陰矢の如し」を意味するラテン語由来の言葉が tempus fugit です。
学習・趣味・仕事で英語に触れていつの間にか三十数年。英検1級とTOEIC900点超を取得した今も上級者への道は遠いですが、これまで出会った印象深い単語や表現について書いていきます。

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